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2022年4月5日(火)
雁木は私のふるさと

清水史枝(中野区在住、北本町出身)

                    
 18歳で進学のため上京して、そのまま就職、結婚。上越を離れて約45年になります。
コロナ禍で回数は激減しましたが、施設入所中の90歳の母に代わり、実家の用事でたびたび上越に戻ります。私は車の運転ができないので、上越での交通手段はもっぱら自転車です。
今も子供時代と変わりなく、北本町の家から一人で行けるのは、一番遠くて母校の高田高校でしょうか。雨や雪が降ったら歩くしかありません。
 昨年末に行ったときのことです。上越妙高駅でバスに乗り本町2丁目で下車。高校時代の友人の建築士の息子さんが購入した古い町家を見せてもらいます。
高い吹抜けに何本もの太い梁、奥まで続く土間、急な階段を上がった2階には渡り廊下。子供の頃遊んだ友達の家そのままで、なんとも懐かしい。それなのにWiFi完備。まだ改修工事中でしたが、完成したら事務所や憩いの場として貸出しをするということなので、ZOOM会議に貸してねと伝えた後、隣の日本一美味しいパン屋リスドールで夕食確保。そのまま雁木通りを進み、お馴染みの店員さんと目が合ったらその店を素通りすることはできません。少しずつ荷物が増えていき、次はくろかわ呉服店で同級生の店主といつもの情報交換。その隣の遊心堂では絵画の親子展開催中。その「親子」とはさっきの町家の持ち主のお爺様と父上です。会場にいた友人とお喋りして蜜柑をもらいました。実家の前では隣のおばさんの介護の苦労話を聞いて野菜をもらい、結局この日は駅から家まで半日かかり、荷物は倍になりました。
 以前、お土産や薬局の支払いにお金が足りなくなったことがありました。カード類を東京に忘れたので困っていると、目の前に止まった車から幼馴染の男性が「なにしてんだね」と声をかけてくれました。顔を見るなり「1万円貸して!」と叫ぶ私に、驚きもせず財布を出してくれて事なきを得ました。いい歳の大人が久しぶりに会った人になんとも無礼なことでしたが、正に天の助けでした。
 私の行動範囲は高田の雁木の中で完結します。そこは今も優しく温かい人たちが迎えてくれる私のふるさとです。